アルバイトの給料を正しく受け取るためには、「最低賃金」について把握しておかなければなりません。
自分の給料が、定められたルールから逸脱していないか、本来受け取るべき金額を誤魔化されていないか。
損をしないよう、アルバイトを始める前に細かな内容を確認しておきましょう。

アルバイトのように支払われる給料が時給によって変動する労働形態には、「最低賃金」と呼ばれる制度が採用されています。
最低賃金を基準にして求人の時給は決められるため、把握しておくと働くときの給料を想定しやすくなるでしょう。
しかし自分の置かれている労働環境の最低賃金を知っている人は少なく、ただバイト先が提示するままの条件を信用してしまっている場合がほとんどです。
働くときに不当な扱いを受けないように、アルバイトにおける最低賃金のルールを確認しておきましょう。

「最低賃金制度」 について

最低賃金制度とは、労働者に対して公平な環境を与えるために制定された国のルールです。
雇う側が自由に賃金を決められてしまうと、不当な給料で人々を働かせることもできてしまいます。一部の人にとって労働環境が理不尽なものとならないよう、事前に予防するための制度だといえるでしょう。

最初に導入されたのは1959年ですが、少しずつ経済状況に合わせて最低賃金は引き上げられ、毎年10月頃に改定が行われています。
近年では毎年10~20円という大きな幅で上昇することも多く、日本全体で報酬アップが続いているのです。

アルバイトにも適用される2種類の最低賃金

アルバイトにも最低賃金制度は適用されるため、基本的に一定の額を下回る金額で募集が開始されることはありません。
最低賃金を決めるポイントは2種類あり、それぞれのルールによって金額が調整されています。種類ごとに異なってくる最低賃金を把握して、アルバイトへの応募時に金額が間違っていないか確認しましょう。

地域別最低賃金

アルバイトの最低賃金は地域によって変わり、「地域別最低賃金」という形でそれぞれの都道府県ごとに決定されています。
国内で一律ではないので、自分の住む場所や働く予定地を参考に最低賃金をチェックしてみてください。
例えば北海道は835円、東京は985円、大阪は936円、沖縄は762円が平成30年度の最低賃金となっています。(全て時給換算となっています。)
この金額以上の給与を打ち出している求人が正しいため、応募時の参考にしましょう。

これらの金額は毎年改定され、その時代に見合ったものに変更されるため、定期的に改定内容を確認するのがおすすめです。
平成14年度からの変化を見てみると、当時北海道は637円、東京は708円、大阪は703円、沖縄は604円が最低賃金となっています。
200円以上金額が上がっている場所もあるため、タイミングによっては時給がさらに高くなるかもしれません。

参考:地域別最低賃金の全国一覧(厚生労働省)

特定最低賃金

「特定最低賃金」とは、特定の産業もしくは職種に勤める基幹的労働者(18歳未満と65歳以上や技能習得中の人を除いた)を対象とした制度です。
地域別最低賃金よりも高い水準の給料が必要だと考えられた際に、特別に設定されるものとなっています。
労使関係が申し出た場合に最低賃金審議会が調査審議が行われ、認められれば特定最低賃金を基準とした給料で働くことが可能です。
平成31年3月末の段階で特定最低賃金に設定されている件数は229件、適用労働者数は289万人となっています。
新設と廃止が常に行われているので、今は特定最低賃金でなくてもいずれ適用対象になる可能性もあるでしょう。

参考:特定最低賃金の全国一覧(厚生労働省)

自分のアルバイトの最低賃金を計算してみよう

自分がアルバイトをする場所の最低賃金がわかったら、それを基準に支払われる給料を計算してみるのがおすすめです。
どれくらいの労働時間でどの程度の収入になるのかが把握できていれば、欲しいものを購入したり、遊びに出かけたりといったこれからの計画を立てやすくなるでしょう。

日給の場合の計算方法

日給での支払いの場合、日給を所定の労働時間で割り、結果が最低賃金額よりも大きい場合に正当な給料であると判断できます。
「日給÷所定労働時間≧最低賃金額」という式で表すことができるため、事前にバイト先の日給を当てはめて計算しておきましょう。

リス太
リス太

例)東京で日給が9,200円、8時間労働のアルバイトの場合

9,200÷8=1,150円

東京の最低賃金額である985円を上回ります

月給の場合の計算方法

月給制のアルバイトの場合、「月給÷一ヶ月の平均所定労働時間(年間の所定労働日数×一日の労働時間÷12)≧最低賃金額」という式で計算を行うことができます。
常にフルタイムで働く人と、曜日によって労働時間が変わる人では月の平均所定労働時間が変わってくるので、まずは自分がどれくらい働いているのか調べましょう。

リス太
リス太

例)大阪で月給が150,000円、年間の所定労働日数が255日、毎日8時間のアルバイトの場合

150,000÷(255×8÷12)=882.3円

大阪の最低賃金である936円を下回っていることになります

また総支給額に交通費や家族手当などが含まれている場合、それらを除いた額を月給として計算する必要があります。
全部で180,000円の給料だとしても、交通費5,000円、家族手当20,000円という内訳であるなら、差し引いた155,000円で計算をしましょう。

アルバイトの試用期間中の最低賃金はどうなるの?

アルバイトに採用されたばかりの頃は、業務を覚えるまで「試用期間」として働くこともあります。
中には、東京で時給1,000円(試用期間中は950円)といった形を取り、時給を変えている職場も多いです。
しかしこの場合、試用期間中の時給が東京の最低賃金を下回っているため、違法だと考えられるかもしれません。
よくある質問として挙げられる試用期間中の時給についても、以下から確認しておきましょう。

試用期間中は最低賃金より低い時給で労働が可能になる「減額特例制度」

最低賃金よりも高い時給であるならば、労働者との合意の上によって雇う側が自由に試用期間中の給料を設定可能です。
仮に最低賃金を下回る契約になる場合でも、「減額特例制度」によって試用期間中の減額はできます。

試用期間を理由とする場合は最長で6ヶ月、最大で20%の減額率までが認められているのです。
そのため、ある程度の減額であれば、法律的にも問題はないと考えることができます。

「減額特例制度」は都道府県労働局長に許可を得る必要が

一方で、すべての試用期間に対して減額特例制度が認められるわけではなく、適用するためには都道府県労働局長に減額申請を行い、許可を得なくてはならないのです。
そのため、店長や採用担当者の独断で最低賃金を下回る契約を結んでいる場合、違法となるので注意しましょう。

平成24年の時点で試用期間を理由とした減額申請は、申請件数と許可件数共に0件となっています。一般的には試用期間の減額はあっても、最低賃金を下回ることはないのです。
試用期間を口実に不当な時給を提案されたのなら、問題があると指摘することが望ましいでしょう。

参考:精神・身体障害による最低賃金の減額特例制度について(厚生労働省)

アルバイト先が最低賃金制度を違反していたら

もしアルバイト先が最低賃金の基準を守らず、安い給料で仕事をさせている場合、それは違反行為となります。
理不尽な要求に屈しないように、違反が判明したら以下を参考にして対策を打つことがおすすめです。

雇い主には罰則が与えられる

アルバイト先が最低賃金以下の時給で労働させていたことがわかった場合、法律に照らし合わせて罰則が与えられます。
最低賃金法の第四十条によって50万円以下の罰金が科せらえるため、それを理解した上でバイト先と話し合いを進めてみましょう。

給与明細を渡してくれないバイト先などは、時給を誤魔化している可能性もあります。
まずは自分の給料が最低賃金通りに支払われているのか確認し、下回っていることがわかったら違反であることを追及してみてください。

少しでも問題があるのなら労働基準監督署へ相談を

お金に関する問題をバイト先と話しにくいと感じるのなら、労働基準監督署へ相談してみましょう。無料で労働者の相談を受け付けてくれるため、そのケースに最適な解決策を提示してくれます。

例えば、最低賃金が改定されたのに、自分の時給は過去の金額のままの場合、なかなか言い出しづらいでしょう。
そういったときは労働基準監督署へ連絡し、事態の改善を図ってもらいましょう。

匿名での相談が可能なので、自分が話したことをバイト先に知られないようお願いすることができます。少しでも職場に問題があるのなら、まずは相談して話を聞いてもらうのが得策です。

まとめ

アルバイトの募集で必ず見かける時給は、最低賃金という基準によって作られているのです。
働く人は最低賃金以上の給料を得る権利があるので、応募をする前にしっかりとチェックしておきましょう。

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